〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.29 2012年7月号
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■ 友達を作ることの大切さを教えてくれるこの一冊


奈良美智・文・絵『ともだちがほしかったこいぬ』(マガジンハウス)

中野渡 陽子

 あるところに、さみしい想いをしている子犬がいました。「ぼくは いつも ひとりぼっちで とっても さみしかった。だれか どっかから やってきて ともだちに なってくれないかって いっつも おもってた。」さみしい想いをしている訳は、あまりに大き過ぎてみんなが「みっけられない」ことでした。あるとき、そんな子犬にひとりの女の子が気づいてくれました。女の子は大きな子犬の体をどんどんどんどん登っていきます。とうとう、頭のところまでやってきました。「あたまの てっぺんまで きたときに すべって ころんで ごろごろ どっしん!」女の子もびっくり、子犬もびっくり。二人は見つめ合い、微笑みました。「おんなのこは いっぱい うたを うたってくれ」ました。「そうして、ぼくたちは ともだちに なれた」のです。
 女の子は家へ帰りましたが、子犬はもう寂しくありません。女の子が「またね!!」と言ってくれたからです。「きみが もしも ひとりぼっちで とても さびしくても きっと どこかでだれかが きみとであうのを まってるよ だいじなのは さがすきもち!」大き過ぎて誰にも気づいてもらえなかった子犬は、「さがすきもち」があったからこそ、こうして女の子と友達となることができたのです。
 この本の作者、奈良美智(ならよしとも)は私と同じ青森出身です。青森県立美術館に行ったことがきっかけで、この本を知りました。この本の大きな子犬は、「あおもり犬」という美術品として展示されています。その大きな犬との出会いが印象に残りました。女の子の目つきに特徴のあることがわかります。特徴のあるその目は、子犬の目でもあることがわかるのです。ユニークな女の子とユニークな子犬、友達のいなかった二人が友達となるこの絵本は、友達を作ろうとすることの大切さを教えてくれるのです。
 

(なかのわたりあきこ: 視覚障害教育コース3年)


■ 新刊紹介


ジャン・オーメロッド文・フレヤ・ブラックウッド絵『モーディとくま』(岩崎書店)


 「たまには うんどうしなくちゃ いけないわ・・・じてんしゃに のるのは、どう?」女の子モーディがくまを誘います。それでいて、「サングラスを していかなきゃ」「ぼうしを かぶっていかなきゃ」「スカーフも ひつようね」と、さんざんくまを待たせての出発。「うんどうって ほんとうに いいわよね」、そう言うモーディは、急な上り坂をくまが漕ぐ自転車のバスケットに。(「じてんしゃのり」)
 モーディがくまの家へと入り込みます。テーブルのおかゆを食べ、椅子に座ります。そこへくまの家族が戻ってきます。それを知ったモーディ、「ここ、あの かぞくの おうち なんだわ」手にした絵本『三びきのくま』通りの展開です。「おかえりなさい、おかゆをたべる?」とくまが聞くのも、モーディがおかゆを食べてきたからと言えます。「わたしの おきにいりの いすが、ほかのだれかに とられちゃったら どうしよう!」と心配するモーディを、「だいじょうぶ。ぼくは きみのいすを とったりしないよ」とやさしく包んでくれるのです。(「おかえりなさい」)
 「おやつを つくりましょう」、モーディはそう言いながら、一緒に作ろうとしません。作るのはくまなのです。「メイプルシロップを かけてね」「ナッツも ちゃんといれてね」「はちみつも ちょびっと たらしてね」と注文ばかり。用意がすっかり整うと、今度は、「かんぺきすぎて、たべられない」とまた注文。それでもくまは、「おなかが すくまで、まてばいいさ」どこまでもくまはやさしいのです。(「さんじのおちゃかい」)
 ダンスをするモーディを見て、くまが笑い出します。怒ったモーディは部屋に籠ります。「なかなおりしたいな とおもって」、やってきたくまにモーディはドアを閉ざしてしまいます。「チョコレートのビスケットを もってきたんだ」、それでもまたドアを閉ざしてしまうのです。「ぼくと いっしょに おどって いただけませんでしょうか」、またまたやってきたくま、ここでは求めるのがくま、他と逆になっているのがわかります。だからこそ、モーディがしたいと思っている、強く思っていることなのがわかるのです。モーディはくまと「つきの ひかりに てらされて ルンバを おどり ジルバを おどり サルサを おどる」のです。(「なかなおり」)
 モーディはくまのぬいぐるにひもをつけ、引いています。そのぬいぐるみに、こうしましょう、こうしてちょうだいといつも言葉をかけている、とすれば、くまはモーディの注文や願望が形をとって大きくなったものと考えることができます。すべてがぬいぐるみを相手に見たモーディの夢なのかもしれないのです。

(藤田 博)
発行:宮城教育大学附属図書館


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