■ 飴を舐めると・・・
柴生 彰
飴との出合いを語る、それは幼小期へと戻ります。
私の記憶にある最初の出合いは、「サクマドロップス」です。食べたい味が出てきますようにと振ると、カランカランと音を立てます。その時の期待と興奮。そして手に取って、食べたかった味と同じだった時の感動。白色のハッカ味が出てきた時の無念さ。ハッカ味が苦手でしたので、戻して再挑戦しました。
次に記憶に残っているのが「どんぐりガム」。飴とガムがコラボレーションしています。途中からガムに変身するのです。最後まで噛まない、これが私の舐め方です。口の中で溶けて消えていくのを確認します。チョコレートも舐め続けることが多いのです。それが普通だと思っていましたが、「チョコは噛んで食べるからいいんだよ。舐め続ける人なんていないよ」と妻から言われた一言が衝撃的。「そうか・・・最後まで舐め続けるのは飴だけなんだ。」と実感。そういうわけで飴は最後まで舐め続けるのが私のポリシーですが、「どんぐりガム」だけは途中で噛んでしまいます。飴が溶け切れるのを待てないのです。自分に負けたと思いながら、最後は我慢し切れず・・・。
「シュワシュワ飴」は、ソーダ味やコーラ味のように、炭酸が入っているのではと思える飴です。昔から両親に、「子どもの頃はコーヒーと炭酸は飲んではいけない。骨が溶けてしまい、大きくならないからだ」と言われ続けてきました。そうした中で、この「シュワシュワ飴」との出合いは最高でした。炭酸飲料が飲めなくても、ジュースと同じ味を飴で楽しむことができるわけですから。飴と言えばソーダ味かコーラ味、いつも決まっていたのです。その他に二つ一緒に食べると味が変わる飴、ひもを引っ張って大きな飴だと大当りでもう一個など、飴との思い出は語り尽くせません。
この『ふしぎなキャンディーやさん』では、子豚が狸のおじさんと出合い、飴をもらいます。最初にもらう飴は黄色。これを舐めると重たいものでも持ててしまうのです。次に緑色。これを舐めると自分自身が消え、透明になってしまいます。最後に赤色。これは狼に変身します。変身するこの飴の力を使って、子豚は他の動物にいたずらをするのですが、「だめだ、だめだ へたくそ! あんなんじゃ ウサギ、いや ねずみだって つかまえられないぜ!」と本物の狼から指導を受けることになります。子豚は震えながら狼たちのいる場所へ。しかし、飴の力が消えてしまい、子豚に戻ったことを見破られてしまうのです。オオカミに食べられそうになった子豚は、緑色の飴を舐めて逃げようとします。しかし、匂いだけはごまかすことはできません。今度こそ捕まってしまいもうだめ・・・と思ったその時、「こまった ときに なめると ビックリする ことが おこるよ」と狸のおじさんからもらっていた白色の飴を舐めると、巨大豚に大変身。狼はびっくりして逃げていったという話です。
この絵本を手にした時、すぐに惹かれてしまいました。家に持ち帰り、5歳の息子と3歳の娘に読んでやりました。すると息子は、「ぼくは、白色の大きくなるキャンディーがいい。はやくパパやママみたいに大人になりたいから。」娘は、「私は力もちになりたい」と言って掛け布団を持ち上げていました。公開研究会当日、担任をしている子どもたちに読んでやりました。読み終わった後、「どんな飴がほしい」と尋ねると、たくさんの声が。ほとんど記憶にないのですが、「空飛ぶ飴がほしい」との声だけは覚えています。
飴一つで幸せに。子どもたちは一粒の飴を舐めるだけで、幸せなひと時を感じるのかもしれません。そして、この本に出合った子どもたちは、「空を飛ぶ飴」のような飴を作ってくれるのかもしれません。
※「ふしぎなキャンディーやさん」/宮西達也/金の星社
(附属幼稚園教諭)