■ 子どもの心の声に耳を傾ける大切さを教えてくれるこの一冊
くすのきしげのり作/石井聖岳絵『おこだでませんように』(小学館)
笠野 茜
「ぼくは、いつもおこられる。いえでも がっこうでも おこられる。」妹の面倒を見ていたのに、お母さんから怒られ、最初に仲間外れをしてきた友だちが悪いのに、先生から怒られる。本当は「おかあちゃんに いつも きれいで いてほしいのに」、「そんな おこった かお しとったら、しわが ふえるで」と言っては怒られる。「あーあ、ぼくは いつも おこられてばっかりや。」
よかれと思ってしただけなのに、褒められたいと思ってしただけなのに、なぜか怒られてしまうのです。怒られてばかりのその「ぼく」が、七夕様に「いちばんの おねがい」を書きます。習ったばかりのひらがなで一生懸命に書いたのは、「おこだでませんように」。文はめちゃくちゃ、「ま」の字に至っては鏡文字、それでも、「ぼく」の思いが込められたその短冊を目にした先生とお母さんは、それまで怒ってばかりいたこと、「ぼく」の気持ちをわかろうとしなかったことに気付くのです。「ぼく」の思いは伝わりました、願い事はさっそく叶ったのです。
「お姉ちゃんなのだから」とよく怒られたこと、本当はこうなのにと説明しようとすると、「ああ言えばこう言う」と、「ぼく」のように怒られたこともありました。幼いながらに、「子どもの気持ちを理解できる大人になるぞ」と決意したこともあったと、懐かしい気持ちになりました。あの時のあの決意はどこに行ってしまったのでしょうか。子どもに向かって感情むき出しになったり、自分の都合で接したりしてはいなかったろうかと、自分の言動を振り返りました。先生になり、親になったら、子どもの心の声にしっかりと耳を傾けよう、子どもの本当の気持ちを理解できる大人になろうと決意を新たにさせてくれた一冊です。
(英語コミュニケーションコース4年)