〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.23 2011年7月号
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■ 「だいじなたからもの」のありかを教えてくれるこの一冊

カール・ノラック文 / クロード・K・デュボワ絵 / 河村万里子訳『わたしはだいじなたからもの』(ほるぷ出版)

遠藤 しおり

 期待に胸が躍る新学期、ロラは歌を歌いながら帰ります。歌うと、幸せが体中に広がるのです。できたばかりの友達のルルが、ロラに尋ねます。「ねぇ ロラは、おうちでは なんてよばれてるの?」「ちびちゃん とか、かわいいようせいさん とか、だいじなたからもの とか」、ロラは元気よく答えます。それを聞くと、ルルも他の子たちも「えー!」と言って笑い出したのです。
 「だれだって、そととはちがう うちでのよびながあるとおもうけど……。」そう考えたロラは、調べてみることにしました。「すみません、おまわりさんはこどものころ、おうちで なんてよばれてましたか?」「うちのひよこちゃん さ。」パン屋さんにも尋ねます。「まんまるロールパンだったかな。」ロラは何だかほっとして、歌い出します。しかし、バス停に着くと、先ほどの友達が、「あははは、ようせいさん だってさ!やーい、ちびちゃん!」と冷やかしました。ロラはしょんぼりと、一人、歩いて帰るのです。歌も歌わず、口笛も吹かずに。
 「おかえり、ちびちゃん」玄関を開けたパパがそう言っても、ロラはふくれっ面。パパとママは心配そうに尋ねます。「いったいどうしたの、うちのだいじなたからもの?」「それよ、それは わたしのこと!」ロラは、パパとママの腕の中に飛び込みました。
翌朝、学校に向かうとき、ルルがロラのところへやってきます。「きのうはごめんね。ほんとはうらやましかったの。うちではだれも、あんなにかわいいよびかたはしてくれないから。」ルルはロラに、「ちびちゃん とか、ようせいさん とか、だいじなたからもの とか」と呼んでもらうようにしたことを教えます。「それはだめ!そのよびかたは わたしの、わたしだけの!」そう言ったロラは気がつくのです、「どこのこもいえでは だいじなたからもの」であることを。「ねぇ ルル、うたをうたうと、とってもたのしくなるって しってる?」二人は一緒に歌を歌います。幸せな気持ちが、体いっぱいに広がります。
天真爛漫で前向きのロラ、そのロラを大切に思う人たちが支えています。誰にも大切に思ってくれている人がいます。思う人にとって、ひとりひとりが「うちのだいじなたからもの」なのです。日々の暮らしに追われ、忘れてしまいがちですが、ときには立ち止まって、支えてくれる両親や友人、大切な人に感謝の気持ちを伝えてみたくなります。幸せな気持ちが胸いっぱいに広がり、思わず歌いたくなるのです。

 

(教育学コース4年)


■ 新刊紹介

あべ弘士『しろもくろも、みんなおいで』(童心社)

 白と黒は対極にある、従って、対立する色と言えるでしょうか。結婚式と葬式、それぞれにあっての白服と黒服を考えれば、対極ではあっても対立でないことがわかります。二つは非日常の時間枠を共有しているからです。白と黒を対立ととらえてしまうのは、二つに分け、それぞれに善と悪の色をつける、色眼鏡によって見てしまうからと言えます。実は、二つは背中合わせでつながっている同じ仲間、大変な仲良しかもしれないのです。とすれば、「白か黒か」ではない、「白も黒も」になって当然、まさしく「しろもくろも、みんなおいで」なのです。
シロアジサシやシロハヤブサ、シロカモメなど白い鳥がいます。クロアジサシやクロウタドリ、クロウミツバメなど黒い鳥がいます。同じ種でも白いものと黒いものがあります。ホッキョクグマとアメリカクロクマ、ダイサギとクロサギのようにです。体全体が白で一部が黒、またはその逆、白黒模様のものもいます。ユキヒョウやワオキツネザル、シマウマのようにです。北極と南極、二つの極が性格において一つのように、「北の海のとりたちも、みんなしろとくろ。南の海のペンギンも、みんなしろとくろ」です。ウミガラスやツノメドリは北極、アデリーペンギンやマゼランペンギンは南極です。季節によって白から黒に、黒から白に色を変えるものもいます。オコジョやノウサギ、ライチョウなどです。
「しろいとり くろいとり みんなおいで!」「しろとくろの もようたち みんなあつまれ!」ここにあるのは、白と黒の対立の世界とは対極の、白と黒とが融和した世界なのです。「しろとくろが なかよくあそんでる。」「しろとくろが わらってる。」
マリー・ホール・エッツの『あるあさ、ぼくは……』(ぺんぎん社)、『もりのなか』(福音館書店)はいずれも白と黒、モノトーンの世界です。『あるあさ、ぼくは……』では、男の子はオンドリやブタ、ウサギの真似をします。『もりのなか』では、男の子を先頭に、ライオンやゾウ、クマが一列になって行進します。人間と動物の距離が限りなくゼロの世界、それを描くための白と黒なのです。

(藤田 博)


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