〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.18 2011年7月号
バックナンバーはこちら
[ 1 | 2 | 34 ]

■ じゃんけんをする

藤田  博 

  じゃんけんは勝ったり負けたり、一人だけ勝ちつづけることはありません。あるとすれば、よほど運がいいためと考えます。かなり重要なこともじゃんけんで決める、決めたその結果に異を唱えないのは、じゃんけんは平等との考えがあるからと言えます。三すくみの関係性の上につくり出される、じゃんけんの公平性です。
せなけいこ作・絵『じゃんけんぽん』(すずき出版)は、お日さまと雲のじゃんけんから始まります。雲の勝ち、勝った雲は、「おおよろこびで ゆきを ふらせました。」子どもたちとゆきだるまがじゃんけんします。ゆきだるまの勝ち、勝ったゆきだるまは、石ではなく人参の鼻をつけてもらいます。「その にんじん、ぼくの みかんと とりかえてよ」、うさぎがそう言うと、「じゃんけんで かったらね」とゆきだるま。うさぎの勝ち、勝ったうさぎは人参を手に入れます。鼻がみかんになったゆきだるま、「うん、これも わるくない。」眠くないうさぎがお月さまに、「じゃんけんで かったら もっと おきて いても いい?」勝ったのはお月さま、負けたうさぎは寝ることに。お月さまとお日さまが、「じゃんけん……ぽーん!」勝ったのがどちらかは、寝ているうさぎの部屋の窓、そのカーテンの隙間から日が射していることから明らかです。この後、お日さまは雲とまたじゃんけんをするのでしょうか。したとして、勝つのはどちらでしょうか。ここにあるのは、じゃんけんが作り出すエンドレスの世界なのです。
 「グー グー グーは、つよいんだい。」と言うグルリンポン、「パー パー パーは、つよいんだい。」と言うパラリンポンがにらめっこ。「うーむ、それなら、じゃんけんしょうぶだ。」じゃんけんをすれば結果は明らかです。「パラリンポンに つつまれちゃった。」そこへ「チョキ チョキ チョキは つよいんだい。」とチョロリンポンがやってきます。グーが、パーが、そしてチョキがの順になっているのは、チョキは間に入る、つなぎの役を果たすためと考えられます。パーに勝ったチョキに勝ったグー、パーに負けたグーは、「ぼくって、よわくて つよいんだね。かったり まけたり、するんだね。」「つよくて よわくて じゃんけんぽん。さんにん いっしょに じゃんけんしたら、あいこでしょったら あいこでしょ。ずっと ずっと あいこでしょ。」あさのななみ文・よねやまえいいち絵『つよくてよわいぞじゃんけんぽん』(ポプラ社)の、「つよくてよわい」じゃんけんの世界です。
むらいきくこ作・絵『じゃんけん』(岩崎書店)は、母が子どもたち三人にさせるじゃんけんです。「いっぽん のこった バナナ」「ひとつ のこった あめ」「いちまい のこった おせんべい」、母は決まってじゃんけんをさせます。残った一つを誰が取るかを決めるためなのは言うまでもありません。「ぼくは じゃんけんが よわい。おにいちゃんや いもうとに いつも まける。」と弱音を吐く「ぼく」は、兄と妹に挟まれた「ぼく」なのです。「じゃんけんを しようとすると、あたまの なかで ぐうと ちょきと ぱあが けんかを はじめ」ます。きょうは「ぼくの だいすきな いちごのケーキ」、なおのことそうなのです。ちょきを出してあいこ、「いちごの ケーキが ひとまわり おおきくな」ります。またちょきを出して、「おにいちゃんに かったぞぉー。」「いちごの ケーキが また おおきくな」ります。妹との勝負を前に、「ぼくは ものすごいことに きがつ」くのです。「いもうとは いつも ちょきをだすんだ!さっきだって きのうだって このまえだって……」「いちごの ケーキは どんどん ふくらんで ぼくのあたまからはみだした。」ぐうを出して「ぼく」は負けます。「いちごの ケーキは ばくはつし ばらばらに。」三人兄妹が、「ぼく」を挟んでじゃんけんの関係になっているのがわかります。勝った妹が「ぼく」にケーキをくれます。兄が負けたのも、「ぼく」がちょきを出すのを知っていて、ぱあを出したためかもしれないのです。母がねらったのはそれだったのではないでしょうか。「ぐうは ちょきより つよく ちょきは ぱあより つよく ぱあは ぐうより つよくて ぐうは……」、ここにあるのは、じゃんけんが作り出す横並びの関係なのです。
※「じゃんけんぽん」/せなけいこ作・絵/鈴木出版
※「つよくてよわいぞじゃんけんぽん」/あさのななみ文・よねやまえいいち絵/ポプラ社
※「じゃんけん」/むらいきくこ作・絵/岩崎書店

(英語教育講座)


[ 1 | 2 | 34 ]
図書館のホームページに戻る バックナンバー
Copyright(C) Miyagi University of Education Library 2008