〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.22 2011年5月号
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■ 一つとして同じものはないことの大切さを教えてくれるこの一冊

ナンシー・ティルマン作/内田恭子訳『あなたが生まれた夜に』(朝日新聞出版)

大場 淳美


 「あなた」が生まれた夜、お月さまとお星さまが見守る中、夜の風が、「この世でたったひとつの、あなただけの物語がはじまるわ」とささやきます。ささやかれた「あなたのすてきな名前」は、「そよ風にのって、畑を越えて、海を越えて、木々の間を通り抜けて、みんなの耳に響きわたりました。」それを聞いたホッキョクグマは踊り明かし、渡り鳥はお祝をしようと飛んで家に帰り、お月さまは次の日の朝まで輝きつづけたのです。自分が生まれた夜も、これほどに「すてきな夜」だったのではと思わせてくれます。
 失敗したり、間違ったりは誰にもあるはずです。自分自身の存在意義すらわからなくなることがあるかもしれません。しかし、一人一人が生まれたことそのものが、感動をもたらしていたのだとすれば、存在している意味がない人などいないことになります。自分は世界でひとりしかいません。ここに存在していること自体、奇跡なのです。そこにそうしているだけですてきなことなのです。
 私自身も、自分がここに存在する意味について悩んだことが何度もあります。これから先も悩むことはあるでしょう。その度にこの絵本を思い出すのではと思います。「もし、お月さまが次の日の朝まで輝いていたり、テントウムシが飛び去らずにじっとしていたり、小鳥たちが窓辺でくつろいでいたりしたら、それはみんなあなたの笑顔を見たいと願っているから・・・。」という言葉を思い出すことで、笑顔になれると思うからです。
世の中には、生きている幸せを感じることのできる人、生きたいのに生きることができない人、生きることに苦しみを感じている人など様々あります。その人生に一つとして同じものはない、私がこの絵本から学んだのは当たり前のそのことなのです。
 

(英語コミュニケーションコース4年)


■ 新刊紹介

モー・ウィレムズ文・ジョン・J・ミユース絵・さくまゆみこ訳
『まちのいぬといなかのかえる』(岩波書店)

 
「それは、はるの ことでした。」「まちのいぬ」が「いなか」にやって来ます。いぬは、「まっしぐらに はしっていきました。」「いわの うえに へんな ものが いるのを みつけ」たいぬは、「なに してるの?」と聞きます。「ともだちを まってるの」、いなかのかえるは、「にーっと わらって こたえま」す。「きみを ともだちに しても いいけどね。」いぬは、「いなかの かえるに、いなかの あそびを おしえてもらいました。」
 「それは、なつの ことでした。」いぬは「まっしぐらに はしっていきました。」同じ「まっしぐら」でも、「はる」のときとは違っています。かえるに会いたい、会って遊びたい思いがあっての走りだからです。「こんどは ぼくの ばんだよ・・・まちの あそびを おしえてあげるね。」
 「それは、あきの ことでした。」いぬは「まっしぐらに はしっていきました。」「まっしぐら」のいぬをはぐらかすかのように、かえるは「おもいだしあそび」をしようと言います。「いっしょに いわの うえに すわ」ったいぬとかえるは、「ぴょんぴょん したり、バチャバチャ したり、・・・した はるの ひの ことを おもいだしました。」「クンクンしたり、えだを ポーンとしたり、・・・した なつの ひの ことを おもいだしました。」「いっしょに」「おもいだし」の遊びをする、そこには、空間、時間を共にする意味合いがつくり出されているのがわかります。
「それは、ふゆの ことでした。」いぬは「まっしぐらに はしっていきました。」いぬは「いなかの かえるを さがしました」が、「どこにも いませんでした。」
「それは、また はるの ことでした。」「ともだちを まってるの」、いぬがしまりすにそう言います。「まってる」の「まつ」がいぬ、「ともだち」がかえるなのは明らかです。いぬは「にーっと かえるわらいを して」、かえるの言ったことばを繰り返すのです、「きみを ともだちに しても いいけどね。」
かえるはどうしたのでしょうか。「あき」にいぬと遊んだとき、「なんだか くたびれたよ。」と言っていたのが気になります。「おもいだしあそびを しよう」と言い出したのが気になります。死んでしまったのではないでしょうか。それでも、いぬにまた会えたかもしれません。「はる」の訪れとともに冬眠からさめ、いぬにまた会うことができた、そう思いたいのです。

(藤田 博)


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