〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.22 2011年5月号 PDF版はこちら
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■ 忘れないでいたいこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小野寺 泰子
■ くつを履いて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・藤田 博
■ 「ならぬものはなりませぬ」からの脱却・・・・・・・・・・・・・・・・齋藤 貴裕
■ 一つとして同じものはないことの大切さを教えてくれるこの一冊・・・・・大場 淳美
■ 新刊紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・藤田 博
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■ 忘れないでいたいこと

小野寺 泰子

 ちょっと考えてみれば「なるほど!」と思うけれど、身の回りにものが沢山あることが当然のような生活を続けていると、つい忘れがちな「ものの大切さ」。尽きることがないとただ漠然と思っている様々なものについて、迫力ある強烈なキャラクターで「もったいない」と説くおばあさんの存在が、私たちの心の中にじわじわと迫ってきます。それがこの絵本の魅力となっているのです。

 絵本『もったいないばあさん』と出会ったのは、私が小学校5年生の担任をしていた時のことでした。当時勤務していた小学校では、各学年毎月1回、朝の読書タイムに地域の読み聞かせグループの方々に、様々なジャンルの絵本を紹介(1回に2〜3冊)していただいていました。何度目かの読み聞かせの日に、その絵本は登場しました。「こんなに のこして もったいない わたしが たべても いいのかい?・・・/コップ 1ぱいで たりるだろ もったいない こと するんじゃ ない!・・・」5年生の子どもたちは、絵本のページがめくられ、登場する男の子がものを簡単に捨てたり、無駄にしたりするたびに、「もったいなーい」と言って行動を起こすおばさんに大爆笑。しかし、そのうちに、「そういえば、私の家でもみんな水の出しっぱなしはしないようにしている。」「お母さんは、広告やカレンダーの裏もメモ用紙にして使っている。」「だれもいない部屋の電気は消している。テレビも見ない時は消している。」といったつぶやきがあちらこちらから聞こえてきました。そして、絵本につられて「もったいなーい」と口々に言いながら、子どもたちは、ものを大切にすることについて考え始めたのです。

 折しも、社会科で農業・漁業・畜産・工業などについて調べ、様々な産業にかかわる人々の工夫や苦労について学んだ子どもたちには、ものを作ってくれる人々への感謝の気持ちが芽ばえていました。また、総合的な学習の時間に「森林の学習を通して環境を考える」テーマで活動をしていたことも、自分たちの生活を考える上で影響を与えたようでした。子どもたちは、日頃心がけていることの他に、ものの価値を生かし切るためにできることを次々に見つけてきました。その中に『もったいないばあさんがくるよ!』の絵本がありました。食べ物の他にも身に付ける物の使い方や住まい方など、なるほどと感じるアイディアの数々に、生活がより豊かなものになるといった発見がありました。絵本の後半には、水道も電気もガスもなく、井戸の水やろうそくの火を使っていた江戸時代の暮らしも紹介されていました。
なくなって初めてその大切さに気付くのが、身の回りの数々のものたち。これからも、「もったいない」という気持ちを忘れないでいたい。そして、その気持ちから発する取組を、その場限りのものとしてではなく継続していくことこそ、今必要とされていることだと思ったのでした。


 ※「もったいないばあさん」真珠まりこ作・絵/講談社
※「もったいないばあさんがくるよ!」真珠まりこ作・絵/講談社

(家庭科教育講座)


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