■ 読み聞かせしてもらった思い出がよみがえるこの一冊
林 明子作・絵『はじめてのキャンプ』(福音館書店)
後藤 あや子
小さい頃、毎日、楽しみにしていたことがありました。寝る前にベッドで、好きな絵本を両親に一冊読んでもらうことです。目の前に広がる世界にいつもわくわくしていました。そうして読んでもらった数多くの絵本の中から、心に残る1冊を紹介したいと思います。
なほちゃんは小さな女の子です。おおきい子だけでキャンプに行くと聞いて悔しくなったなほちゃんは、「わたしもいく!」と言い出します。なほちゃんの「はじめてのキャンプ」の始まりです。重い荷物運びに薪集め・・・小さいなほちゃんには大変な仕事ばかりです。それでも、なほちゃんはおおきい子に負けじと頑張ります。そして夜、みんなが寝静まった頃、なほちゃんはおしっこに行きたくなります。ともこおばさんに声をかけても起きてくれません。仕方なく一人でテントを出ると、外は真っ暗、虫の声が響いています。近くの草むらでおしっこを済ませたなほちゃんは、急に怖くなります。急いでテントに戻ろうするなほちゃんの目に何か動くものが。テントに入りかけた時には、髪の毛とシャツを誰かに引っ張られたような気が。夢中で逃げ込んだなほちゃんを包んでくれたのは、ともこおばさんの優しい声でした・・・。大自然に囲まれての初めてのキャンプ。絵本の最後には、様々な経験を通してひとまわり成長したなほちゃんの姿を見ることができます。
子どもの頃、家族でよくキャンプに出かけていた私には、夜、一人でテントを出た時の、深い森に囲まれた何とも言えないあの恐怖感がよく分かります。ここには、子どもの抱くそうした思いがよくとらえられています。絵が赤、青、黄、黒、白の5色で描かれているのも大きな特徴です。色使いがシンプルであることで、読み手が中身にじっくり目を向けられるようになっているのです。
大学生になった今、絵本を読む機会はなくなっています。久々に絵本を手に取り、時間をかけて読み返してみました。絵本の中身と共に、これを両親に読んでもらった時の様が思い出となってよみがえり、懐かしい気持ちでいっぱいになりました。私が親になった時、先生となって生徒を受け持った時、自分がしてもらったように、たくさんの絵本を読んでやりたいと思います。
(教育心理学コース3年)