〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.19 2010年11月号
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■ 展開の早い時代劇風絵本

秋塲 文東

 子どもたちは手裏剣遊びが好きである。附属幼稚園では、年中児が牛乳パックを切ったものを十字型にして手裏剣遊びをしている。「見て」とニコニコしながら手裏剣を見せに来る姿は、とてもほほえましい。年長児は折り紙で手裏剣を作り、「えいっ」と飛ばして遊んでいる。作り方を女児が教え、男児が学ぶ光景もすてきだなあと思う。子どもにとって忍者というのは、それほどかっこいい存在なのだろう。
そんな遊びがあった時に、読み聞かせに適すると思われる一冊を紹介したい。『ハのハの小天狗』だ。

いつものように、ハーモニカを吹きながら下校途中の「僕」とみすずちゃんの前に、突然、山の上から忍者の一団が現れる。驚く間もなく、「ハのハの小天狗 みすず姫はもらいうけたぞ」と忍者が叫びながら切り込んでくる。あまりの展開の早さに驚きながらページをめくると、「僕」もいつの間にかハのハの小天狗になっているという、とんでもない話。(話が急すぎ)と思うかもしれないが、この時点で読者は忍者の世界に引きずり込まれているのだ。

忍者と小天狗の間で、「こいっ」「タァーッ」とすぐに戦いが始まる。まるで時代劇を見ている気分だ。いや、時代劇そのものだろう。恐れる姫が小天狗に寄り添う。小天狗は姫を助けようと立ち会う。が、忍者が姫に一撃を加えようとする。ピンチ!ところが姫も刀を抜いて危機をかわす。逃げる忍者たちを「待ていっ」と追いかける小天狗。するといかにも強そうな忍者の頭(かしら)が現れる。

「むふふふっ 小天狗やるな。」

この絵本では切られる描写が全くない、教育的配慮がなされている。そしてオノマトペが多く使われる。「シュッ」と手裏剣、「タァッ」とかわす。「ビュッ ビュッ」「カン カン」「とおーっ」「コーン」「シュッ シュッ シュッ」「カチーン」これらはすべてゴシックで書かれている。思わず読者も声を張り上げて読みたくなってしまう。

忍者の頭との戦いに話を戻す。手裏剣を嵐のように投げた頭は何と言うだろう。

「ムッ 手り剣がなくなった。」

これが上半身アップで描かれる。この間抜けな感じが面白い。
その後の展開は想像にお任せする。

「ドアーッ」「チェーイ」「チャーン」
「あっ 小天狗さま」「ボアーン!」「モアモア」

この絵本を読み聞かせると、幼児たちは食い入るように絵本を見ている。
そういえば私も、幼稚園児の時に手裏剣遊びをしたのを思い出す。作れなくて泣いた思い出であるが。小学生の時、修学旅行で白虎刀を買ってチャンバラごっこをしたことも懐かしい思い出だ。
時代劇ものの本に惹かれる私は、やっぱり日本人と思う。

※「ハのハの小天狗」 飯野和好作・絵/ほるぷ出版                            

(附属幼稚園教諭)



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