■ いつまでも一緒にいたいと思うすばらしさを教えてくれるこの一冊
ガース・ウィリアムズ文・絵/まつおかきょうこ訳
『しろいうさぎとくろいうさぎ』(福音館書店)後藤 姫奈
白いうさぎと黒いうさぎが森の中に棲んでいます。二ひきは毎日、楽しく遊びます。いつものように、馬とびをします。ところが、しばらくすると、黒いうさぎは座り込み、悲しそうな顔をするのです。「どうかしたの?」白いうさぎがそう聞くと、「うん、ぼく、ちょっと かんがえてたんだ」と答えます。かくれんぼをしても、どんぐり探しをしても、かけっこをしても、ひなぎく跳びをしても、クローバーくぐりをしても、その度に黒いうさぎは座り込み、悲しそうな顔をして言うのです。「うん、ぼく、ちょっと かんがえてたんだ」
「さっきから、なにを そんなに かんがえてるの?」白いうさぎの問い掛けに、黒いうさぎは答えます。「ぼく、ねがいごとを しているんだよ」「ねがいごとって?」との問い掛けに、黒いうさぎは、その願いごとを口にするのです。「いつも いつも、いつまでも、きみといっしょに いられますようにってさ」
白いうさぎは手を差し伸べます。黒いうさぎがやわらかなその手をそっとにぎります。それから二匹は、たんぽぽの花を摘み、耳にさします。幸せそうな二ひきの様子を見に、他のうさぎや森の動物たちが集まってきます。月明かりの下、皆で結婚式のダンスを踊るのです。
二ひきのうさぎは、今日も一緒に楽しく遊び、暮らしています。黒いうさぎが、悲しそうな顔をすることはもうありません。
この絵本では、白と黒だけと思われるほどに色が使われていません。それでいて、悲しげな黒いうさぎの顔、黒いうさぎの願いごとを聞いた白いうさぎの驚いた顔、「ねえ、そのこと、もっと いっしょうけんめい ねがってごらんなさいよ」と白いうさぎに言われ、心を籠めて「これからさき、いつも きみといっしょに いられますように!」と言う黒いうさぎ、すべてが繊細に活き活きと描かれています。
黒いうさぎが悲しそうな顔をするのはどうしてなのか、小さい頃不思議に思いましたが、いま読むと、黒いうさぎの気持ちが、白いうさぎの気持ちがよくわかります。人を好きになること、いつまでも一緒にいたいと思うことのすばらしさが、シンプルでありながら豊かに描き出されているのです。読み終えると、ほのぼのとした幸せな気持ちになります。いつか自分の子どもに読んでやり、黒いうさぎの切ない気持ちがわかる日がくるのを見守りたいと思う、私のお気に入りの一冊です。
(英語コミュニケーションコース4年)