■ パムケロシリーズの楽しみ
遠藤 仁
カナダ在住の絵本作家島田ゆか氏の手になるバムケロシリーズは、犬のバムとかえるのケロが織りなす愉快な物語です。描き込まれた絵とシックな色使いは大人をも魅了します。ちょっと値は張りますが、既刊六冊がセットになった〈バムとケロのなかまたち〉がお勧めです。
さて、第一作の『バムとケロのにちようび 』をちょっとご紹介しましょう。
雨の日曜日、外で遊べないバムは、仕方なく本を読んで過ごすことにしました。ところが、ケロがあまりに部屋を汚していたため、まずは掃除から始めることにしました。散らかった部屋がようやくきれいになったと思いきや、外から泥だらけのケロが帰ってきて台無しです。ケロを風呂に入れた後、おやつのドーナツを作り、本を探しに屋根裏部屋に上がりますが、無事に本が読めるようになるまでには、まだまだ波乱が待ち受けています。ストーリーは単純ですが、この絵本の最大の面白さは、なんといっても表紙や本文に描きこまれた絵にさまざまな仕掛けが施されていることです。たとえば、部屋に飾られた額の絵は、出てくるたびに微妙にどこかが異なっていたり、山のように盛られたドーナツには、一つだけ形の異なるものが混じっていたりします。表紙では雨が降っていますが、さて裏表紙はどうでしょう。表紙と裏表紙の額の絵は、どこか違っていませんか? よほど注意深く見ないと気付かない仕掛けもあり、絵本を開くたびに新たな発見があって驚かされます。
絵本の絵は、単に文章の理解を助ける補佐役と思われがちですが、決してそうではありません。特に、このシリーズでは本文中で語られることのないサブストーリーが展開しており、それを子どもと同じ目線で発見する楽しみがあります。絵の発信する情報は、往々にして大人は見逃しがちですが、なぜか子どもは目ざとく見つけているものです。無意識のうちにも、大人は、文章から得られる情報に強く依存した言語生活に慣らされているのでしょう。そういった意味でも、センスのよい絵は、私たちに豊かな癒しの時間を与えてくれます。
本シリーズの作家島田ゆか氏は、自身のHP(http://www.bamkero.com/)を立ち上げているほか、版元の文溪堂HPにも「バムケロinformation」という特設ページが用意されています。双方とも絵が美しく、バムケロシリーズを楽しむための情報があふれています。
※「バムとケロのにちようび 」島田ゆか作・絵/文渓堂
(初等教育教員養成課程子ども文化コース)