■ 「ともだち」の大切さを考えさせてくれるこの一冊
スーザン・バーレイ作・絵/小川仁央訳『わすれられない おくりもの』(評論社)
小野寺 惠子
スーザン・バーレイ『わすれられない おくりもの』は、物知りで、人望の厚いアナグマが、後に残していくともだちを気に掛けながら、静かに死を迎えるところから始まります。慕ってきたアナグマの死に、誰もが悲しい気持ちになります。しかし、アナグマは「おくりもの」を残していたのです。モグラにはハサミの使い方を、カエルにはスケートのすべり方を、キツネにはネクタイの結び方を、ウサギには料理の仕方を・・・それぞれがいま特技としているものは、どれも、アナグマが教えてくれたことでした。
アナグマの「おくりもの」には、共通点があるのがわかります。ハサミがつくり出すのは、「手をつないだ、モグラのくさり」、ネクタイは、文字通り結び方、そして、凍りついた川でのスケートは時間が止まっていること、しょうがパンの焼き方は、時間をかけるものとしての料理。そこに見えているのは、つなぎ、結ぶことと円環的時間です。「おくりもの」の思い出を語り合い、アナグマの思い出を語り合うことで、モグラが、カエルが、キツネが、ウサギが「ともだち」として結ばれるのです。
春は別れと出会いの季節です。いまの「ともだち」とこれから出会う「ともだち」、どちらも大切にしていきたい、そして、私自身も誰かの素敵な「ともだち」でありたいと思わせてくれる一冊です。
(国際文化専攻4年)