〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.15 2010年3月号
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■ なかまはずれ

藤田  博 

 「たいくつでいやになっちゃうなあ」、そう言ってクレヨンの箱を飛び出したきいろは、画用紙を見つけると蝶を描きます。きいろがあかとピンクを呼んできます。あかはチューリップを、ピンクはコスモスを描きます。あかとピンクがみどりときみどりを呼んできます。きみどりはコスモスに、みどりはチューリップに葉を描きます。後に、ちゃいろ、おうどいろ、あお、みずいろがつづきます。「ぼくらのえが できてきたぞ!」くろが聞きます、「ねえ、ぼくは?ぼくは、どこを かけばいいの?」答えは、「くろくんは、まにあってるよ」でした。なかやみわ作・絵『くれよんのくろくん』(童心社)が描き出す、なかまはずれのくろくんです。
 
 「なんで ぼくって、こんないろ なんだろう・・・」シャープペンが知恵を授けてくれます。くろは画用紙一面を真っ黒に。「くろくん!きみ、なんてことを してくれるんだ。」シャープペンが画用紙の上を回転すると、中からあかが、ピンクが、みどりが、色とりどりの花火となって表れます。思わず賞賛の声が、「くろってすごいね。」
ダン・ヤッカリーノ作・もとしたいづみ訳『ダサいぬ』(講談社)のいぬは、「おまえみたいな ひどい かお、みたこと ない」とねこから言われるほどのダサいいぬ。オウムからも、金魚からもそう言われるダサいぬは、「いつもなかまはずれ」です。同じいぬのジャーマン・シェパードからはばかにされ、グレイハウンドからは笑われ、プードルからは、「ねえ、みた? あの かお!」と言われるダサいぬです。
隣りに誰か引越してきたようです。しかし、塀が高くて見えません。ダサいぬは、塀の向こうのいぬに「ゴールデン・レトリーバーです。」とうそをついてしまいます。気になるのはバレた後のこと。「ダサいぬの ぼくを みたら にげちゃうに きまってる」からです。塀の向こうのいぬが塀の下に穴を掘ったことで、二匹は顔を合わせます。目の前にいるのは、自分とすっかり同じ、「正真正銘の」ダサいぬ。なかまはずれだった二匹は、それだけ余計に「いいともだちに」なれるのです。
新学期を迎えた動物の学校です。チンパンジーが、マントヒヒが、イヌが、ペリカンが・・・います。そこへカモノハシがやって来ます。「さあ まずグループにわかれましょう。きゅうしょくのときのグループよ。ミルクをのむこは あつまれ!」先生がそう言います。「カモノハシくん あなたはここじゃないでしょう。」「はい。でも うまれてからは おかあさんの おちちを のんでいたんです。」お乳を飲むことではそのグループに入れても、卵で生まれていることで外れてしまうのです。「じゃあ しばらく すこしはなれて まんなかにいてちょうだい。」
「つぎは たいそうのときのグループよ。はねと くちばしのあるこは あつまれ。」「せんせい ぼくはどっちに はいればいいんですか?」くちばしはあるのに翼がない、くちばしには歯があって、鳥とは違う。「ぼくだけ だれともちがうんです。」先生は音楽の授業をすることに。音楽なら自分にできること、得意なことをして力を合わせられるからです。最後はお絵描きの時間。「はなをつかってかくこ くちばしをつかってかくこ。あしをつかうこ つめをつかうこ しっぽをつかうこ。いろいろです。」ジェラール・ステア作・ウィリー・グラサウア絵・河野万里子訳『カモノハシくんはどこ?』(福音館書店)は、哺乳類として唯一、卵を産むカモノハシを描いているのです。
くろくん、ダサいぬ、カモノハシを並べることで「なかまはずれ」の本質が見えてきます。くろくんは同じ箱に入った同じクレヨン、まったく同じ、同じであることがわかっているからこそのなかまはずれです。ダサいぬとねこや金魚から言われたくない、それはその通りとしても、いぬから言われる方がはるかに堪えます。同じいぬだからです。くろくん、ダサいぬが、「同じ」内なるものを外へと出そうとするなかまはずれなのに対して、外から内へ入ることができるかどうか、向きを異にするなかまはずれがカモノハシなのです。   ※「くれよんのくろくん」なかやみわ作・絵/童心社
※「ダサいぬ」ダン・ヤッカリーノ作・もとしたいづみ訳/講談社
※「カモノハシくんはどこ?」ジェラール・ステア作・ウィリー・グラサウア絵・ 河野万里子訳/福音館書店

(英語教育講座)


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