〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.14 2010年1月号 PDF版はこちら
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■ さかだちのできるわにが見たものは・・・? ・・・・・・・・木下 英俊
■ なわとびをする・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・藤田 博
■ 「さかなはさかな」、何とも重みのある言葉です・・・・・鵜殿 義雅
■ 生きる悲しみを教えてくれるこの一冊・・・・・・・・・・柴崎 満理奈
■ 新刊紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・藤田 博
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■ さかだちのできるわにが見たものは・・・?

木下 英俊

 わにのコーネリアスは、生まれる時、卵から立って出てきました。大きくなった彼は、立ったまま、「ぼくには くさむらの ずっと むこうが みえる!」、「うえから さかなが みえるよ!」と、他のわにには見えない景色を教えてやります。でも他のわには、「それが どうしたっていうのさ?」、「へえ それで?」と、あまりいい気はしないようでした。コーネリアスは、怒って川岸から出ていってしまいます。そこで彼は猿に出会います。

 猿は、「ぼくは さかだちが できる」と言って、逆立ちをやってみせたり、しっぽで木にぶら下がってみせたりしました。驚いたコーネリアスは、「それ おしえてくれる?」とお願いします。猿はコーネリアスの練習を嬉しそうに助けてやります。逆立ちと、しっぽでぶら下がるのをおぼえたコーネリアスは、胸を張ってもとの川岸に歩いて帰ります。そして他のわにの前で、逆立ちやしっぽでぶら下がるのを自慢そうにやってみせたのですが、彼らはやはり顔をしかめて、「へえ それで!」しか言ってくれません。がっかりしたコーネリアスは、猿のところへ戻ろうと考えたのです。しかし、ふとふりかえると、他のわにたちが逆立ちやしっぽでぶら下がる練習をしていました。コーネリアスは微笑み、「かわぎしでの くらしは これで すっかり かわるだろう。」と言うのです。
 立って歩くだけでも変わっているのに、コーネリアスは、さらに逆立ちやしっぽでぶら下がるのを覚えようとします。私も小さい頃からずっと逆立ちをしたり、鉄棒にぶら下がったりするのが大好きだったので、こんなコーネリアスにとても親近感を覚えます。

 這った姿勢と、立った姿勢での目線は明らかに違い、別世界のような違った景色が見えます。逆立ちをしたり、ぶら下がったりして見える景色も普段とは違ったものです。その景色の不思議さや魅力は、実際に逆立ちやぶら下がりをやってみなければわからないことです。コーネリアスが最後に微笑んだのは、そんな景色の見える新しい世界に、他のわにが足を踏み入れようとしているのを嬉しく思ったからかもしれないのです。
 
※「コーネリアス たってあるいたわにのはなし」レオ・レオニ作・絵/谷川俊太郎訳/好学社

(保健体育講座)


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