■ ひっくり返しの意味を考えさせてくれるこの一冊
トミー・アンゲラー・作/今江祥智・訳『すてきな三にんぐみ』(偕成社)星山 藍
黒いマントに黒い帽子、帽子の下からはギロリと覗く鋭い目。手にはギラリと赤く光る大まさかり。「この さんにんぐみに であったら、ごふじんは きを うしない、しっかりものでも きもを つぶし、いぬなんか いちもくさん……。」
「こわい」三人組は、金持ちを狙っては宝を取り上げ、隠れ家にため込んでいました。ある日、三人組がいつものように馬車を襲うと、中には宝物ではなく、孤児の女の子ティファニーちゃんが。連れて帰ると、宝の山を見たティファニーちゃんが、「まぁあ、これ どうするの?」これまではどうするつもりもなかった三人・・・これから「どうするの?」
三人組の三角にティファニーちゃんが加わることで、四角になりました。一つ二つと増えていくその角は、やがて鋭い角が和らいで、誰をも包み込む滑らかな円へと形を変えるのです。三人だけでは気付くことのなかった発見です。人生は時に180度方向を変えることがあります。「こわーいどろぼうさま」三人組は「すてきな」ことを始めたのです。
読み終わった後、「こわい」三人組が急に変わった印象を受けますが、「人が好き」な優しい心は三人組の中に元々あったものなのではないでしょうか。決して誰も傷つけず、盗んだ宝にもまったく手を付けていなかったのですから。馬車を襲ったのは、人と関わりたい気持ちの表れだったとも考えられるのです。こんな三人組をあなたも「すてきな」三人組と思ってしまうはずです。
(国際文化専攻4年)