■ 無償の愛について教えてくれるこの一冊
浜田廣介・作/いもとようこ・絵『ないた赤おに』(金の星社)畠山 美緒
この作品は、童話絵本の中でも多くの人に読まれ、知られているものの一つです。浜田廣介の代表作が、ぬくもりの伝わるいもとようこのイラストで、大人になっても忘れたくない物語として描かれています。
心優しい赤鬼には人間と仲良くなりたい夢がありました。友達の青鬼は、その願いを叶えるべく、自らを犠牲にして、赤鬼が怖い鬼でないことを村人たちに証明します。そのおかげで、赤鬼は人間の友達をたくさん作ることができました。しかし、赤鬼の願いが叶ったその後、青鬼の姿は見えなくなってしまいます。赤鬼と人間との関係を壊したくないと思った青鬼は、赤鬼の幸せを願いながら、赤鬼の前から姿を消してしまったのです。
青鬼のその行動は、赤鬼の目にはどう映ったのでしょうか。人間と仲良くなることと引き換えに青鬼を失ってしまった赤鬼は、青鬼が残した手紙を読んで涙を流して泣き続けます。青鬼がいなくなってしまった悲しみ、寂しさ、青鬼の思いやりの深さへの感謝、さまざまな気持ちを感じ取ることができます。
絵本の最後は、青鬼の手紙を握り締めて立ち尽くす赤鬼の姿で終わっています。私にはその姿が、どうして何も言わずにいなくなってしまったのだとの悲しみに浸っているようにも、優しさへの感謝の気持ちでいっぱいになっているようにも見えました。青鬼の無償の愛の尊さが、赤鬼の涙を通して読者の心にしみ込んできます。赤鬼の流す涙は、青鬼がいなくなってしまった寂しさよりも、自分を思ってくれていたことがひしひしと伝わってきたからのものと感じました。見返りを求めず、相手のためだけに行動した青鬼の無償の愛は、いつの時代も読み手の心を温かくしてくれるように思うのです。
(技術教育専攻4年)