■ 授業の場で取り上げた絵本
佐藤 雅子
私は「保育内容の指導法B」という授業で、絵本を一冊紹介し、読み聞かせもしている。幼稚園教員資格取得の授業なので、絵本について知ってほしいことと、大人でも読み聞かせの体験をしてほしいという考えで取り組んでいる。また短時間で感想を書いてもらって出席票にしている。毎年10〜12冊程度紹介しているが、できるだけ多様な絵本を取り上げるようにしている。今年度の授業の中から3冊取り上げ、学生の感想も紹介したい。
五味太郎作・画『海は広いね、おじいちゃん』(絵本館)
五味太郎独特の絵と色使いが楽しい。この絵本では子どもと老人(おじいちゃん)の組み合わせにナンセンスの世界が加わったおもしろさがある。
学生の感想「ずっとニコニコしながら楽しめた絵本でした。宇宙人が現れた時は、本なんか読んでないで助けないと連れ去られちゃうよと少しヒヤヒヤしたし、子どもがなにを言っても見向きもしなかったおじいちゃんが“女の人”で反応するところには笑ってしまいました。子どもは大人の見ていないところで不思議な体験をするんだなあとほほえましく思っていましたが、まさか最後に宇宙へ飛ぶなんて思ってなかったので新鮮な驚きがありました。ナンセンスな絵本をもっと読んでみたいと思いました。」
彦 一彦作『ぶんた いなかだ』(福武書店)
田舎の暑い夏を、色濃く力強く表現した絵本である。絵本の隅々まで見たくなる懐かしい世界が描かれている。主人公はブルドックのぶんたである。
学生の感想「あたたかみのある色彩と勢いのある筆使い、そしてどこか遊び心のある絵がとても素敵だと思いました。ぶんたが初めて見る海や山、いなかやすいかなどを独自の視点でとらえているのがおもしろいと思いました。驚きや疑問、楽しみや喜びなどがストレートに表現されていて、今では忘れてしまったけれど、幼い頃には私もぶんたのように一つ一つのできごとに多くのことを感じていたのかもしれないと思いました。」
学生の感想「真夏の暑い日をそのままぎゅっと閉じ込めたような絵本だと思った。夏の暑さや日差しのまぶしさ、夏独特の匂いや海の潮の香り、小船に乗っている感覚などがそのまま伝わってくるようであった。」
湯本香樹実文・酒井駒子絵『くまとやまねこ』(河出書房新社)
最初のページでくまが泣いている。仲良しだったことりが死んでしまったのだ。墨絵のような色使いで、時が止まったような悲しい世界が表現されている。やまねことの出会いで仲良しの“ことりの死”を受け入れていくようすが心にしみる。ところどころわずかに使われているピンク色が効果的である。
学生の感想「死んでしまった小鳥の描写から、小鳥が死んでしまったことが信じられなくて、すごく悲しいくまの気持ちが良く伝わってきた。しかし、ひきこもっていたくまがやまねこと出会い、箱の中の小鳥を見せたときにやまねこだけが他の人とは違うことを言ってくれて、くまは嬉しかったのではないかと思う。そしてくまは小鳥の死をきちんと受け止めて“思い出”にすることができて本当に良かったと思う。」
※「海は広いね、おじいちゃん」五味太郎作・画 /絵本館
※「くまとやまねこ」湯本香樹実・作/酒井駒子・絵/河出書房新社
(幼児教育講座)