〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.11 2009年7月号
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■ ティラノサウルスの「こころ」

遠藤 奈保子

 私が「ティラノサウルス・シリーズ」の絵本に出会ったのは、以前勤めていた小学校の校長先生が、朝会で読み聞かせをしてくれたときでした。涙が出そうになるのをぐっとこらえて聞いていたあのときから、私の大好きな絵本になりました。幼稚園の年長さんにも、小学生にも、読んであげたいと思っている絵本です。その中の1冊『きみはほんとうにステキだね』をご紹介します。
 こわくてらんぼうもののティラノサウルスは、ある日、スティラコサウルスたちを追いかけているうちにガケから海へ落ちてしまいます。
 泳げないティラノサウルスがこのまま死んでしまうんだ、と思ったそのとき、エラスモサウルスがティラノサウルスを助けてくれます。エラスモサウルスの優しさに心があたたかくなったティラノサウルスは、エラスモサウルスから「りくの うえにも ティラノサウルスって いう、とっても こわくてらんぼうものの きょうりゅうが いるんでしょう?」と聞かれると、「お、おれは・・・ティラノサウルスなんて知らない!」と、うそをついてしまいます。

 「よかった。 ぼくは、 きみみたいな やさしい きょうりゅうに であえて。 きみは 
 ほんとうに ステキだね。 ともだちも いっぱい いるんでしょう?」
 「あ、ああ。 おまえは? ともだちは?」
 「ともだちは…いない。」
 「じゃあ、おれが ともだちに なってやる。あしたも ここで あおう。」
 ティラノサウルスは、自分の正体をかくして、エラスモサウルスと友達になります。ティラノサウルスだって、本当は、友達なんて一人もいないのです。

 それから二人は、毎日、毎日会い、いつしかティラノサウルスは、エラスモサウルスといつまでもいっしょにいたいと思うようになります。しかし…。
 ちょっぴりせつなくて、でも、なんだか心があたたかくなるラストが待っています。
 
 ティラノサウルスは、こわくて、らんぼうもので、いじわるだと思われているけれど、本当は優しくて、寂しがり屋で、大好きな友達を大切に思う心をもっています。
 一見、乱暴者で、意地悪なことをしても、本当は優しさや素直さを持ち合わせた純粋な心の持ち主だった…そんな人に出会ったことがある人、少なくないのではないでしょうか。そんな気持ちに触れたときには、誰しも心がふっとあたたかくなるものです。また、そういう相手の優しさに気付くことができるのも、とてもすてきなことだと思います。
 幼稚園や小学校に通う子どもたちにも、ティラノサウルスのような純粋さや素直さ、優しさをもって、感じて、成長していってほしいと願っています。絵本を通して、子どもたちがティラノサウルスからいろいろなことを感じ取って、心を豊かに育てていくお手伝いができたら、教育に携わる者としてはとても嬉しいことです。
 この絵本は大人にも人気があります。ティラノサウルス・シリーズに共通する「ちょっぴりせつないけれど、なんだか心があたたかくなる」という感じ。純粋さというものは、人の心を動かすものなのですね。ティラノサウルス・シリーズは、この他にもたくさん出版されています。ぜひ、お気に入りの1冊を見つけてみてください。
 

※「きみはほんとうにステキだね」宮西 達也作・絵/ポプラ社                            

(附属幼稚園4歳児担当)



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