■ 与えることの意味を考えさせてくれるこの一冊
シェル・シルヴァスタイン作・絵、ほんだきんいちろう訳『おおきな木』(篠崎書林)田島 由佳
原題をThe Giving Treeというこの本と出会ったのは、中学3年生の時でした。これは小さな男の子と一本のりんごの木のお話です。小さな男の子と木はとても仲良しでした。毎日を一緒に過ごすことができ、木はとても幸せでした。しかし、男の子が年をとるにつれ、木のところへ遊びに来ることが少なくなっていきます。寂しい思いをしている木のもとへ、久しぶりに男の子がやって来るのですが、木と遊ぶことより、お金を欲しがったり、遠くへ行きたがったりで、木の気持ちをまったく考えないようになってしまっています。そんな男の子に木はりんごの実を与えてお金にさせ、幹を切らせて船を与えます。それでも木は幸せなのです。
自分のすべてを与え、切り株だけになってしまった木のもとへ、年老いた男の子がやって来ます。疲れ果てた男の子に、木は、「もうなにもあげられるものがなくなってしまったわ。でも、わたしの切り株に腰掛けて休んでちょうだい。」と言います。絵本は男の子が切り株に腰掛ける絵で終わっているのです。この終わりが意味するものは何なのでしょうか。木は本当に幸せだったのでしょうか。
中学生の頃、「この木は誰を表していると思うか」と問いかけられたことがあります。この木は、何の見返りも求めず、無償の愛を与えつづける母の姿を表したものに思えます。今、教師を目指している自分は、どれだけこのおおきな木に近づけているのでしょうか。与える立場になろうとしている今、もう一度この本と向き合って、与えることの意味について考えてみたいと思っています。
(国際文化専攻3年)