■ 大切なことを教えてくれるこの一冊
浜田廣介・文/池田竜雄・絵『ないたあかおに』(偕成社)千葉 汐未
この本は、私のお気に入りで、母によく読んでもらいました。鬼と聞いて思い浮かぶのは、怖い、乱暴、邪悪・・・、良いイメージはありません。ところが、この絵本に登場するあかおには、心優しい鬼なのです。
あかおにには一つの願いがあります。人間と仲良くなることです。しかし、人間は「鬼」と聞いただけで恐れ、近づこうとしません。それを見かねた親友のあおおにが、あかおにのために一芝居打つ、村で暴れる憎まれ役を買って出るのです。「悪い」あおおにを追い払うことによって、あかおには良い鬼であるのを人間に認めてもらうことができました。あかおにの願いが叶ったのです。
人間と仲良くなり、楽しく暮らすなかで、あかおにはあおおにのことをふと思い出します。あおおにが気になり、家を訪ねますが、そこで見たのは、永遠の友情を綴った置き手紙でした。あかおには、人間と友達になることができました。しかし、その代償として、最も近くにあった最も大切なものを失ってしまったのです。あおおにがどこか遠くへ行ってしまって初めて、無償の友情の存在に気づいたのです。
友情や愛は目には見えません。大切な人が近くにいればいるほど、愛や友情は当たり前になっていたり、一方的にもらうばかりになっていたりします。大切な人がいなくなって初めて、その大切さが見えてくるのです。何年かぶりにこの本を手に取りました。大切なものほど近くにあり、見えないものなのだということを改めて考えさせられました。
(特別支援教育教員養成課程健康・運動障害教育コース2年)