〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.5 2008年7月号
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■ The Enormous Turnip

齋藤 友靖

 私が英語の授業で紹介した絵本は、The Enormous Turnipです。みなさんは、「おおきなかぶ」と言えば、もう内容はお分かりでしょう。「うんとこしょ、どっこいしょ、それでもかぶはぬけません。おじいさんは、おばあさんをよんできました。」です。
 そう、ロシアの民話「おおきなかぶ」の英語版がThe Enormous Turnipなのです。この英語版にはかぶが抜けた後に続きのお話があるのです。
 一昨年、中学2年生の英語の授業でこの本を紹介しました。子どもたちはその頃ちょうど、“I think that〜”“because〜”などの言語材料を学習していました。授業の流れは、まずThe Enormous Turnipを紹介します。 次に生徒を車座に座らせて、ALTが絵本を見せながら範読します。生徒にとって未習の語句が使われますが、ALTがジェスチャーなどで補足するだけで生徒は内容を十分理解していたようです。 次に、やっとかぶが抜けた場面で物語を読むのを一旦止めます。そこで、この絵本には続きがあることを伝え、どんなストーリーなのか予想をさせます。 子どもたちは、「やっと抜けたかぶを食べるのかな。かぶの中から何か出てくるのかな。」と発想豊かに予想します。それを生徒と英語(単語レベル)でやりとりをします。その後に、続きの話を読み聞かせます。 最後に、絵本を読んでの感想を英文で書かせます。もちろん、どうしてそのように感じたかという理由も加えて。 多くの生徒は、“I think that 〜 because 〜.”を用いて書いていました。また、発表の場面を設けることで、おもしろさの視点や感じ方の違いに気づかせることもできたと思います。
 『おおきなかぶ』の絵本の一つでは、佐藤忠良氏が絵を描いています。宮城県美術館に佐藤忠良氏の作品が多く展示されていて、生徒にも身近であるという点、子どもたちの多くが小学1年生の時、国語の授業で学習していて、内容をおおまかに覚えているという点、 読んだ後に感想を述べさせることで自分の感じたことを素直に英語で表すことができるという点、そして、“Then the old man pulled and the old women pulled and the boy pulled and the girl pulled with all their might.・・・”という英語の絵本独特のくり返しや音にも触れさせたいという思いから、The Enormous Turnipを教材として使用することにしました。
 英語で書かれた絵本を読むのは、生徒にとって生の作品に触れることができるよい機会だと思います。車座になって絵本の世界に引きつけられる生徒の表情がそれらを物語っていました。 絵本のストーリーも読み手、聞き手のとり方で感じ方は大きく違ってくると思います。その絵本に秘められた作者の思い、文化的な背景もあるでしょう。 それでも、おじいさんやおばあさん、ひいては、ねこやいぬまでが手伝ってかぶを抜こうとする姿に、仲間の力は大きい、enormousな力なのだと感じることは変わらないと思いました。

Vera Southgate & Christine Owen, The Enormous Turnip (Ladybird Books)

 ※「おおきなかぶ」 A・トルストイ再話/内田莉莎子訳/佐藤忠良画/福音館書店

(附属中学校教諭)


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