■ 絵本を読んで英語で表現する授業
佐藤 倫子
嬉しいときの「ぎゅっ」、悲しいときの「ぎゅっ」、ありがとうの「ぎゅっ」・・・。2学年英語科で扱った絵本『HUG』を紹介します。これは、0歳児からを対象とした絵本で、英語で書かれた絵本といっても本文はなく、せりふは"HUG", "BOBO", "MUMMY"の3語しかありません。小猿のボボが、色々な動物たちのHUGする姿を見て、母親に出会うまでのお話です。絵は優しい色合いで描かれ、とても温かい印象を与えます。原書のタイトルが『HUG』であるのに対して、翻訳版では『ぎゅっ』という表現が選ばれています。
授業は、次のように構成しました。絵本をスクリーンに映して、ALTが簡単な英語で絵を描写する文を聞きながら物語を読みます。ボボが寂しそうな顔をした場面で絵を止め、なぜボボは寂しそうな顔をしているのか、また、お母さんに会えた後、ボボはどんなことを学んだのか、その理由を英文で書きました。『HUG』の温かさや触れ合うことの嬉しさだけではなく、寂しそうなボボを助けようとする仲間の大切さについても気付くことのできる絵本です。授業後は、「絵本を英語で読んだのは初めてだったので楽しかった」、「ボボの気持ちを英語で表現するのが大変だった」などの声が聞かれ、絵本を見て表現の工夫をしようという意欲が高まりました。
日本人にとってhugは馴染みの薄い文化といえますが、ただ英語の文を書くだけではなく、絵本のもつ温かさという、本文に表れない部分を読み取ることで、教材が生徒の心に残るものとなったと思います。
※「ぎゅっ」ジェズ・オールバラ作・絵/徳間書店 Jes Alborough, HUG (Candlewick Press)
(附属中学校教諭)