〜カムパネルラとは〜
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニと旅をする
友人なのは言うまでもありません。絵本が開く異世界
への道案内人としての意味を込めたものです。
Vol.1 2007年11月号
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■ 心に残るこの一冊

『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)

佐竹  優                                 

「おいしいね。」母のその一言で、ホットケーキは私の得意とするおやつになった。得意とは言いながら、卵を落としたり、 ボールの中身をこぼしたり、しろくまちゃんと少しも変わらない。大きなホットケーキを焼こうとして、厚くなりすぎてしまったこともある。
 便利な調理器具が溢れ、ホットケーキほどに単純で地味なおやつはなくなった。そうした中だからこそ、 『しろくまちゃんのほっとけーき』は、簡単なものほど手をかけて作るあたたかさを思い出させてくれる。 フライパンが12個並ぶページは、私のお気に入りである。「やけたかな。」「まあだまだ。」はやる気持ちを抑えながら、行ったり来たりする。 ようやく完成したホットケーキをおかあさんとテーブルへと運び、こぐまちゃんを呼ぶ。友達と一緒に分けて食べる喜び。 おいしさを思い出しながらの後片付けに苦労などないのである。
 誰かのために作る喜びは、昔も今も変わらない。私がホットケーキを作ることはほとんどなくなってしまったが、 何を作ろうと調理後の台所は目もあてられない。それでも次こそはと腕まくりができるのは、見た目よりも味よりも、 一緒に食べる家族や友達の笑顔があるからと思っている。
 ※「しろくまちゃんのほっとけーき」わかやま けん作/こぐま社

(英語教育専攻4年)


■ 新刊紹介

松浦寿輝『川の光』(中央公論新社)                                

 『平面論』、『知の庭園』、『物質と記憶』、『表象と倒錯』、手元にある松浦寿輝の本のいくつかを並べたものです。 作家にして詩人、批評家、東大教授、その手になるものはいずれも超が付くほどに難解です。難解をもってなる松浦寿輝がこれをという驚き、と同時に、だからという納得、双方の思いがあります。 しかし、そうしたことはどうでもいい、タータとチッチのクマネズミの兄弟、それにお父さんの物語を楽しめばいいのです。 暗渠化を目的とした工事のため、川岸のすみかを追われた親子が上流へと向かう冒険物語です。 とすれば、敵役がいて味方がいてはお決まりのもの。 あぶないところで助けが現れる、はらはらどきどき感を味わえばいいということです。
ゆるやかに、うねうねと、光りながら流れつづける川は生命そのものです。身近であったその川がいま遠いものになってしまっています。 直線化され、コンクリートによって両岸を固められる。ここでの川のように暗渠化され、見えなくなった川も数多くあります。小さなもの、弱いものへのまなざしを欠いたものとなっているのです。
 斎藤惇夫『ガンバとカワウソの冒険』と読み比べてみることもお勧めです。移動する距離の差がつくり出すスケールの違いはあっても、心が熱くなることでは一つです。 頑張れよと声をかけたくなるのも一つです。頑張れよのその一声は、川に対する思いを残している、川の流れの大切さを忘れていないということに違いありません。
 ※「川の光」松浦寿輝著/中央公論新社

(藤田 博)


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