■ 心に残るこの一冊
『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)佐竹 優
「おいしいね。」母のその一言で、ホットケーキは私の得意とするおやつになった。得意とは言いながら、卵を落としたり、
ボールの中身をこぼしたり、しろくまちゃんと少しも変わらない。大きなホットケーキを焼こうとして、厚くなりすぎてしまったこともある。
便利な調理器具が溢れ、ホットケーキほどに単純で地味なおやつはなくなった。そうした中だからこそ、
『しろくまちゃんのほっとけーき』は、簡単なものほど手をかけて作るあたたかさを思い出させてくれる。
フライパンが12個並ぶページは、私のお気に入りである。「やけたかな。」「まあだまだ。」はやる気持ちを抑えながら、行ったり来たりする。
ようやく完成したホットケーキをおかあさんとテーブルへと運び、こぐまちゃんを呼ぶ。友達と一緒に分けて食べる喜び。
おいしさを思い出しながらの後片付けに苦労などないのである。
誰かのために作る喜びは、昔も今も変わらない。私がホットケーキを作ることはほとんどなくなってしまったが、
何を作ろうと調理後の台所は目もあてられない。それでも次こそはと腕まくりができるのは、見た目よりも味よりも、
一緒に食べる家族や友達の笑顔があるからと思っている。
※「しろくまちゃんのほっとけーき」わかやま けん作/こぐま社
(英語教育専攻4年)