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附属図書館長 遠藤 仁
ご好評いただいている教科書展も10回目を数え、本年度は「歴史のなかの教科書~美術~」と題し、8月1日(月)から8月31日(水)まで開催致します。
平成22年、文部科学省は、これからの時代を生きる子どもたちに欠くことのできない素養としてコミュニケーション能力の育成を掲げています。図画工作や美術も、芸術を愛する心を育み、豊かな情操を養うのみならず、芸術家によるワークショップ型の授業を取り入れるなど、創造的活動の場における協働の営みを通じて、自他の認識力、自己肯定感や達成感の醸成とともに伝える力の向上が意図されています。
改めて多様な教科書を前にすると、時代を追うごとにカラフルになっていく教科書は、作品そのものとの対話の機会となるのみならず、美術を学ぶ意義にまで理解が及ぶよう編纂されていることに気付かされます。ぜひ懐かしい教科書をお手にとりつつ、教科書がまさに時代を映す鏡にほかならないことを実感なさっていただければ幸いです。
なお、8月22日(月)には「図画教育史における美感・再現性・説明の論理」のテーマのもと、立原慶一先生にご専門のお立場からご講演いただきます。ぜひ足をお運びください。
最後になりましたが、監修のみならず講演までお引き受けくださった立原慶一先生、企画全般にご助力下さった平垣内清先生、美術教育講座の先生方に厚く御礼申し上げます。
展示監修 本学名誉教授 立原慶一
今回の展示は、明治以降における図工教科書の歴史を辿ることで、日本人の図工科に対する感じ方、考え方の変遷を考える機会としたいと存じます。当教科で教育しようとした内容は、教科書の紙面に端的に表れております。それは、教育思想と教育実践の間に位置づけられるもので、歴史的な存在として確実性を放っております。そこから窺われる美感・味わいと、再現性・説明性は図工科教育が展開するための基軸であります。今日まで、両者が絡み合って教科書が編纂されるとともに、それをめぐって数々の教育論争が行われ、今日まで多くの教育実践がなされてきましたが、その経緯に思いを馳せて頂きたいと存じます。
明治時代から現代までの美術教科書の歴史をたどりながら、学校教育の中の美術の位置付けや、日本人の美や美術・芸術に対する価値観の変化などを探ります。
明治時代の初期に美術教育がはじまり、それが日本に定着するまで、様々な試行錯誤がありました。その軌跡を当時の美術教科書に基づいて紹介します。
大正時代には、子どもが表現したいものを重視する「自由画教育運動」が全国的な展開を見せます。しかし、昭和戦前期になると、美術教科書にも、時局に配慮した戦時的な題材が導入されるなどしていきました。自由主義的な教育から、戦時体制下での教育への転換を、美術の教科書によって跡付けます。
戦後から現代に至る美術教育は、生活・実用重視、児童・生徒中心の教育、鑑賞学習の充実など、子どもを取り巻く状況・環境の変化に応じて、多様な展開を見せてきました。教科書を通じて美術教育の多様性の一端を紹介します。
西洋絵画を中心に美術教科書に取り上げられた名画を紹介します。
■ 日時:平成28年8月22日(月) 13時~14時30分
■ 講師:立原慶一(本学名誉教授)
■ 会場:宮城教育大学附属図書館スパイラルラボ